一般に広く使われる「敏感肌」という表現。これは、便利なようで実に曖昧である。
敏感肌とは、本来問題にならないような外界の刺激に対して、赤みや痒み、痛み等の反応が引き起こしやすい状態であり、つまり、トラブルを起こしやすい肌と言い換えることができる。
肌トラブルといっても、乾燥からべたつき、にきび、広くはシミ・しわまで多岐に渡るため、それらの多彩な要素を「敏感肌」と一言で表現してしまうのは少々無理があり、それらの要素を客観的に紐解くことが必要である。
肌質は、遺伝要因と環境要因によって規定されるが、肌質に関わる遺伝要因として、いくつかのSNP(一塩基多型)※が近年報告されている。このSNPは敏感肌を考えるうえでも重要な要素だが、SNPと肌質との関連を直接調べた研究はこれまでなく、SNPから肌質を予測するアルゴリズムは開発されていない。
遺伝子肌質研究では、敏感肌を含めたさまざまな肌質をより客観的にとらえることを目的として、東大皮膚科医による肌質の評価とSNPの関連を探索し、SNP解析による客観的な肌質予測アルゴリズムの構築を目指している。具体的には、乾燥や皮膚バリア機能の低下、脂性肌やシミになりやすい肌、しわになりやすい肌など、個々の肌トラブルのなりやすさを選定SNPから予想する計算式を開発し、個々人にあったスキンケア指標につなげていく。
本研究により、これまで曖昧だった「敏感肌」が明確に定義されることが期待される。
※SNP(読み:スニップ):個人間の遺伝情報のわずかな違いのこと